すしづめ

お尻の絵とか描いてます







もし中学生に戻れたら

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 僕は26歳だが平日昼間でも家でYoutubeを観ているので、犬の散歩は僕の役目だ。以前は18時前後がその時間だったが、最近は僕が四六時中家にいるのを犬も分かっているから、まだ日の登っているうちに散歩に連れて行けと吠え出す。僕は犬が すきなので吠えられるとホイホイ散歩に連れて行く。

 

 僕が通っていた中学校の周りを回るのがいつもの散歩のコースだ。すれ違うのは買い物に出かける主婦や同じように犬の散歩をするおじさん、ヤンキーだった。それが白昼散歩になってからは、下校する中学生がメインになった。彼らはグラウンドで部活に勤しむ連中に どこか引け目を感じている。我々は陰キャラだからというオーラが滲み出ている。皆僕を見ると平日昼間からなにやってんだこのおっさんという目になる。我々は陰キャラなだけだから将来お前みたいにはならないぞという湿ったオーラが見える。僕はお前らのうちの何人かはこうなるぞ、という視線を返す。彼らは目を逸らす。

 

 ふとテニスコートに目をやると、ソフトテニス部が練習している。僕は彼らの先輩である。同じようにそのコートで汗を流した先輩である。僕らが現役の頃の練習はとてもハードで、年の休みは盆と正月の合わせて1週間にも満たないものだった。平日の練習は球が見えなくなるまで吐きそうになるほど走り回った。おかげで近畿大会に優勝した(僕は主に強いペアにやられる役として活躍)が、最後の大会には団体戦のメンバーから外された。

 

 もし今中学生に戻れたら、と考える。当時顧問に何度怒鳴られても分からなかったことが今なら分かる気がする。今の現役生の練習はダラダラしていて、散歩中の道路から怒鳴りつけてやりたくなる。僕もこっち側に来ているのだ。だから分かる気がする。少なくとも分かろうとする。顧問のよき理解者になれると思う。僕は間違いなく当時より上手くなって、どこかの高校から推薦が来て、進路も変わり、平日昼間からこうして犬の散歩をしていなかっただろう。

 

 でもやっぱり中学生に戻りたくない。顧問は数年前に病気で亡くなった。小学生の頃からの親友は自殺した。先輩はネズミ講にハマった。そうなる未来が分かっていて、彼らと目を合わすことは苦痛だ。

 

 彼らも出来ることなら過去に戻りたいはずだ。顧問は自分の体と家族に気をかけて過ごすだろう。同級生にそそのかされて入りたくもない大学に入学した親友は別の進路を選ぶだろう。ネズミ講は今が幸せかもしれないので過去に戻りたくないかもしれない。各々に未来を告げ口すれば違う道が開けるかもしれないが、一歩間違えば僕は死神になる。僕が殺すことになる。こんな博打なことはない。

 

 現実に戻ると僕は平日の昼間から犬の散歩をしている。もし中学生に戻れたら、26歳の僕は平日昼間に家に居ないかもしれない。犬は人生の大半をひとりぼっちで過ごすことになっていたかもしれない。だからやっぱり中学生には戻りたくない。